野球を観戦する時のスタイルって人それぞれですよね。
応援歌を歌いながら熱の入った応援をする人もいれば、お気に入りの選手の一挙手一投足を凝視する人も、何なら審判に注目したりもするもんだから、野球の楽しみ方っていうのは千差万別、正解なんてないんだなあと思います。
そんな中、私がいつも気にしているのが「配球」
キャッチャーがどのようなボールをどのコースに要求するのか、はたまたどうしてそのボールを選択したのか。
自分の中でああだこうだ考えながら野球を観ていると、ついつい時間を忘れてしまいます。
キャッチャーとリード、切っても切り離せない関係にあるように思えるのですが、データ解析が進んだ現代野球においても、まだまだその有効性を解明しきれていないのが現状です。
野球評論家の中には「リードは結果論」と割り切るような方もいらっしゃいます。
ちなみに最もデータ化が進んでいるMLBでは、キャッチャーの評価を、フレーミング(ボール球をストライクと判定させる捕球技術)や盗塁阻止率、ボールを後逸させない壁能力等、数値で表しやすいアプローチで試みているそうな。
そんな中、今回は敢えて主観をゴリゴリに入れて、記事を書かせて頂きます。笑
今回取り上げるのは、6/16と6/17の中日ドラゴンズ対千葉ロッテマリーンズ戦。
9回裏に中日のマルティネス投手を加藤・武山の両キャッチャーがどのようにリードしたか、比較していきましょう。
悪夢の9回裏
6/16の試合、9回裏に登板したマルティネス投手は点差以上のプレッシャーを背負っていたように思います。
回が始まるまでは中日ドラゴンズが5点リード、どこか楽勝ムードが漂っていたところを、回の頭から投げていた田島投手が1点を失い、1アウト1,3塁のピンチを作ったところでのリリーフ登板。
点差もあったため十分な投球練習をしていなかったのでしょう、投げる球にいつものようなキレがなく、早々に3点を失ってしまいます。
それでもまだ1点差。
なんとかアウトを1つとり2アウト、勝利は目前です。
しかし、試合はこれでは終わりませんでした。
迎えるバッターは田村選手、ストレートを中心に追い込みますが、中日の加藤捕手が要求した変化球は甘く入って、ライト前に運ばれてしまいます。
続く荻野選手に対しても攻めは単調。
加藤捕手が要求したストレートとスライダーは高めに浮き、カットされるうちにカウントを悪くして四球を与えてしまいます。
2アウト満塁になり、ピッチャーをロドリゲス投手に交代させるもロッテの勢いを止められず、この日2打席連続ホームランを放っていた鈴木大地選手に、値千金のサヨナラタイムリーを許してゲームセットとなりました。
この日、マルティネス投手が投じた19球の内、フォークは0球。
落差が大きく、空振りが見込める球をどうして投げなかった、いや加藤捕手が投げさせる事が出来なかったのか。
それには2つの伏線がありました。
まず1つ目は、この日、マルティネス投手の前に投げていた田島投手の球を2つ後逸してしまった事。
いずれも低めの難しい球で記録上は田島投手の暴投となっているのですが、加藤捕手としては後逸してしまった事実に変わりがありません。
そして2つ目が、遡ること約2ヶ月前、4/12の甲子園での阪神戦。
加藤捕手は7回裏に3度の後逸をし、イニング途中で異例の捕手交代を言い渡されていました。(いずれも記録上は暴投)
後日インタビューで「アウェーの雰囲気に飲まれてしまった」と話した加藤捕手ですが、6/16も同様の状態となり、前回の失敗が頭をよぎっていたのは容易に想像がつきます。
これら2つの伏線から、マルティネス投手に対して低めのフォークを要求する事が難しくなってしまった加藤捕手。
前回の失敗がチラつく状況で彼が選んだのは、攻めではなく守りの姿勢でした。
改めて振り返って、2アウトランナー1塁で迎えた田村選手との対戦。
カウント1-2と追い込んだ後、変化球が甘く入ったのはマルティネス投手だけでなく加藤捕手にも責任があるように思います。
バッターを追い込み三振を狙うのであれば空振りをとれる低めのフォークを要求すべき場面なのですから、加藤捕手としてもジェスチャー等で低めを意識させる事ができたはずです。
打率2割ちょっとの打者なら打ち取れるだろう、という甘い考えが透けて見えてしまいました。
もし低めのフォークを投げさせて万が一後逸してしまったとしても、ランナー2塁となるだけで、点は入りません。
カウントは2-2もなりますが、フォークを見せた事でバッターとの駆け引きで優位に立つ事ができ、打ち取る確率を上げる事ができたのではないでしょうか。
(もちろん結果論ですけどね)
ランナー1塁の状況で低めを要求できないのであれば、ランナーを3塁に置いてからでは尚のこと。田村選手に続き、荻野選手に対しても単調な攻めになってしまったのは、もはや必然です。
6/16の試合には、他にもターニングポイントがありますが、マルティネス投手&加藤捕手のバッテリーにフォーカスすると、加藤捕手がボールを止める自信が無かったことが配球に影響しているのでは?と思えてしまうのです。
神様のイタズラ
翌6/17のゲーム、前日の敗戦を引きずる事なく中日の選手達が躍動し、9回裏までで1点リード。
そしてマウンドには前日に続いてマルティネス投手が上がります。
前日と同じ、むしろ点差が少なく厳しいシチュエーションとなったのは、野球の神様のイタズラかはたまた。。
しかし大きく違うのが、マスクを被るのが加藤捕手ではなく武山捕手という事です。
ヒットや武山捕手自身のフィルダースチョイスでピンチを招き、ノーアウトランナー2,3塁。
打席には前日の試合でマルティネス投手のストレートをカットし続け、フォアボールを勝ち取った荻野選手が入ります。
しかしこの日は高めのストレートで空振り三振に切ってみせました。
前日ことごとくカットされていた高めのストレートで空振りを取れたのは、2ストライク目のフォークの効果が大きかったはずです。
続く藤岡選手を内野ゴロ打ち取り2アウト。
しかし最後に待ち構えていたのは前日2ホーマーと値千金のサヨナラ打を放った鈴木大地選手。
イケイケの鈴木選手に対してもバッテリーは臆することなく勝負を仕掛け、この日一番の低めのフォークで三振にし止めて、中日は辛くも勝利を掴むのでした。
前日から一転、ピンチの場面でも低めのフォークを要求してバッターを打ち取った武山捕手。
バッターとしては複数の球種をケアしなければならなくなり、それがバッテリー有利な状況を作り出したのは間違いありません。
自身のミスでピンチを作ってしまった武山捕手ですが、気持ちを切り替えて冷静なリードをしたのはやはりベテランの経験の成せる業。
チームに欠かせない存在である事を示した試合でもあったと思います。
それでも加藤に期待する
武山捕手との経験の差を露呈してしまった加藤捕手ですが、首脳陣も、そして私個人としても彼には大きな期待をかけています。
その証拠に、サヨナラ負け後の6/17の試合も、1イニング3後逸を喫した次の試合も、加藤捕手がスタメンマスクを被っています。
大卒でプロ野球5年目、昨年まではわずか数試合しか1軍出場できなかった彼がこれほどまでに期待される理由は、やはり「加藤キャノン」とも形容される強肩でしょう。
谷繁捕手の引退以降、正捕手を固定する事ができなかった中日にとって、一芸にこれだけ秀でた選手の存在は非常に大きいです。
秀でた点があるからこそ、修正点は明確になります。
前述の試合でも露呈してしまった「低めのボールのキャッチング力」そして「経験」です。
それらを伸ばすために首脳陣も加藤捕手に本気で向き合います。
中日で正捕手だった中村コーチも、マンツーマンで厳しい練習を課していました。
「ドラフトが成功か否かは5年後にわかる」なんて格言めいた言葉もありますが、プロ5年目となる加藤捕手にとって今年は非常に重要な1年になるはずです。
同期の上位指名選手が次々とユニフォーム脱ぎ、周りからは「失敗ドラフト」と揶揄される世代の中で、汚名を返上すべく日々汗を流す加藤捕手の背中に期待せざるを得ません。
まとめ
色々話は散らかってしまいましたが、今回は配球についてフォーカスを当てて見ました。
「配球は結果論」という意見について、私なりの見解としては、、、
・たしかに配球は結果論
・ただ打ち取る可能性が高い配球というのは存在する
・その配球を見つけるために必要なのは「経験」
・その配球を実現するために必要なのは「キャッチング能力」
まあこんなところでしょうか。
ある程度仮説は立ったので、いつかデータに基づいて配球を語ってみたいものです。
それでは今回の記事はこの辺で。
ご覧頂き有難う御座いました。